5月14日(木)より蔵前の iwao gallery にて、個展‘Aufheben’を開催いたします。
iwao galleryさんでの展示は2024年以来2年ぶりとなり、新作を発表できることを嬉しく思います。
ご高覧いただけましたら幸いです。
よろしくお願いいたします。
展覧会を企画してくださった iwao gallery 磯辺様に感謝申し上げます。
Aufheben | Maya Makino Exhibition
牧野真耶展
2026年5月14日(木)〜31日(日)
iwao gallery
[木・金]13:00ー19:00[土・日]12:00ー17:00
[休廊]月・火・水
Aufheben
Maya Makino Exhibition
2026.5.14(thu)-31(sun)
Open: Thu,Fri 13:00-19:00 Sat,Sun 12:00-17:00
Close: Mon-Wed
iwao gallery
台東区蔵前2-1-27 2F
(1FはBistro Double 11)
都営浅草線[蔵前駅]A1b出口からすぐ
都営大江戸線[蔵前駅]A6出口 徒歩7分
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この度、iwao galleryでは、牧野真耶の個展「Aufheben」を開催いたします。
牧野はこれまで一貫して〝記憶〟という現象を主題に制作を続けてきました。雨の気配や夜の静けさといった日常の些細な感覚を、幼少期の記憶と結びついた原初的なイメージとして描き出します。その表現を支える重要な要素のひとつが、藍という染料です。幾層にも重なる藍の色彩は、支持体の内部へと染み込みながら、時間を内包するかのように画面に定着します。その揺らぎのある色合いは、記憶の曖昧さや移ろいやすさを静かに映し出しています。ミニマルな構成のなかに、人間が持つ普遍的な色彩の記憶を喚起する絵画です。
〝Aufheben(アウフヘーベン)〟は、哲学者ヘーゲルの用語として知られ、保存と消失、否定と継承といった相反する意味を併せ持つ概念です。記憶は呼び起こされるたびに再編され、現在の意識によって更新され続けます。本展の作品は、作家自身の記憶が立ち現れる直前の気配や、変容し続ける時間のあり方そのものを捉えたものです。鑑賞者もまた、どこか懐かしさを感じると同時に、いまこの瞬間の感覚として新たに編み直されるでしょう。
是非この機会にご高覧ください。
※Aufheben(アウフヘーベン)=ドイツ語。1.持ち上げる・拾い上げる 2.保管する・取っておく 3.取り消す・無効にする。ヘーゲルが提唱した哲学用語(日本語では「止揚」と訳される)でもあり、いくつもの意味を同時にもつ特別な概念で、対立するもの同士がぶつかり合いながら、否定しつつも要素を残し、矛盾に折り合いをつけてより高いレベルへ発展していく。
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アーティスト ステートメント
Aufheben
牧野真耶の絵画制作は、一貫して「記憶」を想起という行為を通して生成され続ける現象として捉えてきた。思い出は呼び起こされるたびに再編され、保存されると同時に変質する。そこに現れる像は、過去の出来事の再現ではなく、現在の意識によって更新された構造である。
これまでの個展「思い出と物語のあいだ」(2011、日本)、「Faded」(2022、ベルギー)、「Out of Focus」(2025、ベルギー)では、意図的・無意図的な想起において生じる鮮明さと曖昧さの共存、すなわち「思い出される瞬間の不確かさ」そのものが、ミニマルな抽象絵画として提示された。
本展「Aufheben」は、そうした記憶の現象学的な探究を一歩進め、記憶を主題とする段階から、認識が時間をどのように内包して立ち上がるのか、その状態そのものへと焦点を移す試みである。ここで参照される記憶は、もはや回帰される対象だけではなく、一度受け入れられ、内面化され、現在の感覚へと統合された状態として扱われる。
「Aufheben」という概念が示すように、本展における記憶は、保存と消失、否定と継承という相反する運動を同時に孕んでいる。過去は否定されることなく保持されるが、そのままの形では残らない。記憶は解体され、再配置され、結果として「過去に縛られない現在」を支える構造へと変容する。
展示される絵画は、具体的な記憶や出来事を示していない。それらは、想起のきっかけとなる現象を捉えた場面として提示されているーミニマルな構成や抑制された色彩は、保持されながら変容し、消失しながらなお作用し続けるという二重の運動の只中で、時間がまだ輪郭を結びきらない瞬間、あるいはすでに過去として遠のきつつあるその気配のなかで、わずかな不均衡のうちに像として現れる。
2026年 牧野真耶
